長春紅團筆記
近代文学系(明治漢詩俳句文芸、モダニズム文学・満洲文学)、近代東洋史(日本・大陸の諸々軍事系)や東洋近代もろもろ。
西洋史(ナポレオニック仏国と、英国海軍、Sir Sideny Smith中心)帆船小説、など調べ物メモまとめ。
【思い出すことなど】特殊潜航艇の小説とか精神障害兵士の研究書
■好きな作品とか気になった資料のもぞもぞ。
・井上武彦『同行二人―特殊潜航艇異聞』
・清水寛編『日本帝国陸軍と精神障害兵士』
■2009年の12月6日のNHKスペシャル「真珠湾の謎~悲劇の特殊潜航艇~」かー!
特殊潜航艇艇・九軍神に入っていない少尉と言えば酒巻和男少尉。
その彼の立場をモチーフ(あくまでモチーフ)にした名作がございます。
井上武彦『同行二人―特殊潜航艇異聞』(雄彦じゃないよ!)
三島由紀夫が大絶賛で悔しがった名作。
確かにこれは三島由紀夫が「自分の書きたいことを全部書かれた」って悔しがるわ。だって三島には書けないもの。
真珠湾攻撃の特殊潜航艇を積んだ伊号潜水艦が呉から出港する。
絶対に生きて帰れない特別攻撃命令を受けた、植物的な美形士官・坂田少尉と、無骨な下士官・稲田兵曹長との濃密な関係を、同じ艦に乗艦している【死に見せらせた人間は美し】くて観察対象にする、そんな軍医長の『私』が観察する話。
彼らは自分らが乗りこむ潜水艇を「坊や」と呼んで愛でるんだよー。
軍医は彼らの関係を妄想するの物凄い。軍医自身も『戦争行為』や『特別攻撃する人間が身近にいる』『死ぬこと』などを、戦闘が近づくにつれて艦内がざわめく空気を感じつつ。
静かな精神世界と宗教(仏教)に関する話なので、一般的な戦争文学ではないけど、張り詰めた海軍人の雰囲気が素晴らしい。ここでの宗教は、浄土真宗高田派を信心する
正直、この作品はもっと評価されて良い作品。三重県と言う真宗高田派の多い地域から出た地方文学としても、真珠湾攻撃ものの戦争文学としても戦後純文学としてもそれぞれ大きな意味を持つ高クオリティ。
http://bit.ly/6hiy9g
■このNHKスペシャルの裏、教育ではETV特集「障害者たちの戦争」!
なぜ分散させてくれなんだ…!
ということで、精神障害兵士に関する書。
清水寛編 『病床日誌』
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA80920047
こちらはまだ未読なので、同じ編者のものを。
清水寛編『日本帝国陸軍と精神障害兵士』
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA81499356
実際の兵士の症例が載っていて、満州駐留時に脱走して満州国軍の中国人兵舎で保護されて漸く皆が認識したとか、内務班でバカ扱いされて不当に扱われてたとか、発見された人は幸運な方で、やはり『負担』とされた人は多そう…。
結局、兵隊を送り出す杜撰なノルマや当時の精神障害に関する知識の乏しさと障害者の社会的地位の低さ、なにより国家総力戦になったときの切羽詰り感がなあ…。
あと彼らをも兵士と看做した『認識』も、単なる精神論だけでは言えぬ気がしてきた。
別の本で読んだっけ。
知能障害の息子が兵役に受かった(昔はままあった。まず身体で判断するから)とき。
ああやっと息子が一人前と認められたんだ!って親が泣いて嬉しがったって言う。
誰にとっても得じゃないのにね…。
それでも親御さんの気持ちは判る。分かるからこそ悲劇やな。
タグ:近代全般書 文芸全般書 陸軍
・井上武彦『同行二人―特殊潜航艇異聞』
・清水寛編『日本帝国陸軍と精神障害兵士』
■2009年の12月6日のNHKスペシャル「真珠湾の謎~悲劇の特殊潜航艇~」かー!
特殊潜航艇艇・九軍神に入っていない少尉と言えば酒巻和男少尉。
その彼の立場をモチーフ(あくまでモチーフ)にした名作がございます。
井上武彦『同行二人―特殊潜航艇異聞』(雄彦じゃないよ!)
三島由紀夫が大絶賛で悔しがった名作。
確かにこれは三島由紀夫が「自分の書きたいことを全部書かれた」って悔しがるわ。だって三島には書けないもの。
真珠湾攻撃の特殊潜航艇を積んだ伊号潜水艦が呉から出港する。
絶対に生きて帰れない特別攻撃命令を受けた、植物的な美形士官・坂田少尉と、無骨な下士官・稲田兵曹長との濃密な関係を、同じ艦に乗艦している【死に見せらせた人間は美し】くて観察対象にする、そんな軍医長の『私』が観察する話。
彼らは自分らが乗りこむ潜水艇を「坊や」と呼んで愛でるんだよー。
軍医は彼らの関係を妄想するの物凄い。軍医自身も『戦争行為』や『特別攻撃する人間が身近にいる』『死ぬこと』などを、戦闘が近づくにつれて艦内がざわめく空気を感じつつ。
静かな精神世界と宗教(仏教)に関する話なので、一般的な戦争文学ではないけど、張り詰めた海軍人の雰囲気が素晴らしい。ここでの宗教は、浄土真宗高田派を信心する
正直、この作品はもっと評価されて良い作品。三重県と言う真宗高田派の多い地域から出た地方文学としても、真珠湾攻撃ものの戦争文学としても戦後純文学としてもそれぞれ大きな意味を持つ高クオリティ。
http://bit.ly/6hiy9g
■このNHKスペシャルの裏、教育ではETV特集「障害者たちの戦争」!
なぜ分散させてくれなんだ…!
ということで、精神障害兵士に関する書。
清水寛編 『病床日誌』
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA80920047
こちらはまだ未読なので、同じ編者のものを。
清水寛編『日本帝国陸軍と精神障害兵士』
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA81499356
実際の兵士の症例が載っていて、満州駐留時に脱走して満州国軍の中国人兵舎で保護されて漸く皆が認識したとか、内務班でバカ扱いされて不当に扱われてたとか、発見された人は幸運な方で、やはり『負担』とされた人は多そう…。
結局、兵隊を送り出す杜撰なノルマや当時の精神障害に関する知識の乏しさと障害者の社会的地位の低さ、なにより国家総力戦になったときの切羽詰り感がなあ…。
あと彼らをも兵士と看做した『認識』も、単なる精神論だけでは言えぬ気がしてきた。
別の本で読んだっけ。
知能障害の息子が兵役に受かった(昔はままあった。まず身体で判断するから)とき。
ああやっと息子が一人前と認められたんだ!って親が泣いて嬉しがったって言う。
誰にとっても得じゃないのにね…。
それでも親御さんの気持ちは判る。分かるからこそ悲劇やな。
タグ:近代全般書 文芸全般書 陸軍
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永月弥生
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