長春紅團筆記
近代文学系(明治漢詩俳句文芸、モダニズム文学・満洲文学)、近代東洋史(日本・大陸の諸々軍事系)や東洋近代もろもろ。
西洋史(ナポレオニック仏国と、英国海軍、Sir Sideny Smith中心)帆船小説、など調べ物メモまとめ。
帰らざる友のおもいで
■「帰らざる友のおもいで 名古屋陸軍幼年学校第47期生第三訓育班」入手。
えーっと…これ。
47期一年生の時に、担任の前田生徒監(S18年9/24に第十四方面軍司令部転出、レイテ・オルモックで戦死)へ送ったハガキ集!!え、これ思いっきりプライベート…!
ハガキ集の体裁は、表裏両面を一面にしてコピー製本したもの。
生徒監殿に宛てた住所が、幼年学校・(たぶん)赴任先の住宅・(おそらく)実家っぽいとこ、と三ヶ所もあって、皆どこに出したらいいのか混乱してたのかな…ばらばらである。
■前田生徒監はお名前が「矗」と書いて「さかん」と読まれるらしい。陸士48期。
ううーんそうか、レイテだったのか。
ってあれか、長嶺少佐と同じ時期に幼年学校生徒監から転出された組か、そのあたりの人かなー。
と思って見てみた。
前田生徒監はS19.9に第14方面軍司令部付でレイテ転出するんだけど、長嶺秀夫少佐(東幼生徒監からレイテ)と同じ時期に転出。
この長嶺さんの証言の『郡上踊りの男』って…名幼と郡上近いし…でも違うよね…あれ…?細切れだから証言の詳細分からん
http://cgi2.nhk.or.jp/shogenarchives/shogen/movie.cgi?das_id=D0001100071_00000
三訓は前田生徒監のあと後任がなくて二訓制になったらしい。
ハガキにはよく風景などが絵が描いてあるんだけど、それは生徒監殿の指示らしい。
写生も軍人に必要だからだそう。幼年学校って音楽の授業もあるしね。
■それから題名の『帰らざる友のおもいで』はやっぱり加賀乙彦先生のあの『帰らざる夏』からだった。
ので、同期生にも受け入れられて好評だったと言うことだろう。…うん。
…ていうか、このあたりの人は実名萌えでもいいんだろうか。
一応この時期は軍籍にあるから軍人として見ていいよね…うん。
ちなみに加賀先生は二訓のフランス語専攻。
昭和18年の星の生徒であるエリート軍人のたまごくんたちの夏休みと、彼らと時代の雰囲気がよくわかるるる。
■てかこれがまた…むちゃくちゃ萌えるんだが…!担任教官へのはがきヤバイはがき!
かわいすぎる…!

鹿間くん…絵もきちんとまとめてるし達筆だし文章もしっかりしてはる…!!
でも、最後のとこに一箇所だけ誤字して消してるとこがかわいさ際立ってる。
このように『家に着きました』報告をみんな出してるみたい。

「夏の目標はアイスクリームの誘惑に負けず一個も食べないことです」おいw増岡ああwww
こういう茶目っ気が少年だのう。
海軍さんの街横須賀にいるってことも決戦色濃いって感じたのかなー。

『毎日漫画ヲ 読ンデ愉快二 生活シテ居リマス』野本ぉwwww
このカタカナと漢字が(現代人のわたしには)おちょくってる感じがしていいなこれw
しかもフクちゃんw
まあ云うても勉強してるだろうけどねこのこたち!
こういうジョークを生徒監殿に出せるくらい、和気あいあいであったのだな、と推察できる。
まだ18年だし、それに中学生だからねえ。

お気楽でいられないこもいる。
雨に降られた後、銃剣のさやにサビ発見した中村君!!!
すっごい反省してる…武士の魂にいいい!!って。しかし素直だ。
すっごい手入れし直したんだろな…あんまり怒られてないといいな…。
ていうか優しげな達筆…!
謝罪系の手紙では他に…夏休み中に『宜 戦 の 詔 勅 』を な く し ま し た!って子とかいるんだけど…!
え、ちょ…もっと大丈夫だったのか…?!!新学期早々怒られなかったかな…心配!!
でもたのしく遊んでまーす!みたいな事も書いてるから無問題か?
あと内容はわからないけど、「不心得なる行為」に「ご寛大なる御処置」ありがとうございましたああ!ってほんとに凄い謝ってるこもいる。
なにしたんや…。
あと、ちょうエリートのたまごが「冬休み中に学校へ残留だし(詳細不明)、尻上がり(逆上がりのことか)も出来ないので心配です」って担任に送ってるううう!
自分メモ:休日の 鉄棒に来て 少年が 尻上がりに世界に入って行けり 佐藤通雅『水の涯』
まさにこの世界だなあ…佐々木くん。さっきみつけた http://j.mp/bDay0G
ヤバイ、どのはがき見てもにこにこするよう!買って良かった!!
■あと、これだけS18~19年正月の投函済みハガキが集まってる資料ということも色々興味深い。
担当員の書く「閲」の(スタンプでなく肉筆)の酷さw
一生懸命描いたであろう絵の上に書かないであげて下さいよ…。
同じ筆跡でわざわざ「〇〇様方」の苗字書き忘れ・差出人名の下に「拝」って書き足してる…!いらん親切!
まあまた今度ほかのもご紹介。
えーっと…これ。
47期一年生の時に、担任の前田生徒監(S18年9/24に第十四方面軍司令部転出、レイテ・オルモックで戦死)へ送ったハガキ集!!え、これ思いっきりプライベート…!
ハガキ集の体裁は、表裏両面を一面にしてコピー製本したもの。
生徒監殿に宛てた住所が、幼年学校・(たぶん)赴任先の住宅・(おそらく)実家っぽいとこ、と三ヶ所もあって、皆どこに出したらいいのか混乱してたのかな…ばらばらである。
■前田生徒監はお名前が「矗」と書いて「さかん」と読まれるらしい。陸士48期。
ううーんそうか、レイテだったのか。
ってあれか、長嶺少佐と同じ時期に幼年学校生徒監から転出された組か、そのあたりの人かなー。
と思って見てみた。
前田生徒監はS19.9に第14方面軍司令部付でレイテ転出するんだけど、長嶺秀夫少佐(東幼生徒監からレイテ)と同じ時期に転出。
この長嶺さんの証言の『郡上踊りの男』って…名幼と郡上近いし…でも違うよね…あれ…?細切れだから証言の詳細分からん
http://cgi2.nhk.or.jp/shogenarchives/shogen/movie.cgi?das_id=D0001100071_00000
三訓は前田生徒監のあと後任がなくて二訓制になったらしい。
ハガキにはよく風景などが絵が描いてあるんだけど、それは生徒監殿の指示らしい。
写生も軍人に必要だからだそう。幼年学校って音楽の授業もあるしね。
■それから題名の『帰らざる友のおもいで』はやっぱり加賀乙彦先生のあの『帰らざる夏』からだった。
ので、同期生にも受け入れられて好評だったと言うことだろう。…うん。
…ていうか、このあたりの人は実名萌えでもいいんだろうか。
一応この時期は軍籍にあるから軍人として見ていいよね…うん。
ちなみに加賀先生は二訓のフランス語専攻。
昭和18年の星の生徒であるエリート軍人のたまごくんたちの夏休みと、彼らと時代の雰囲気がよくわかるるる。
■てかこれがまた…むちゃくちゃ萌えるんだが…!担任教官へのはがきヤバイはがき!
かわいすぎる…!
鹿間くん…絵もきちんとまとめてるし達筆だし文章もしっかりしてはる…!!
でも、最後のとこに一箇所だけ誤字して消してるとこがかわいさ際立ってる。
このように『家に着きました』報告をみんな出してるみたい。
「夏の目標はアイスクリームの誘惑に負けず一個も食べないことです」おいw増岡ああwww
こういう茶目っ気が少年だのう。
海軍さんの街横須賀にいるってことも決戦色濃いって感じたのかなー。
『毎日漫画ヲ 読ンデ愉快二 生活シテ居リマス』野本ぉwwww
このカタカナと漢字が(現代人のわたしには)おちょくってる感じがしていいなこれw
しかもフクちゃんw
まあ云うても勉強してるだろうけどねこのこたち!
こういうジョークを生徒監殿に出せるくらい、和気あいあいであったのだな、と推察できる。
まだ18年だし、それに中学生だからねえ。
お気楽でいられないこもいる。
雨に降られた後、銃剣のさやにサビ発見した中村君!!!
すっごい反省してる…武士の魂にいいい!!って。しかし素直だ。
すっごい手入れし直したんだろな…あんまり怒られてないといいな…。
ていうか優しげな達筆…!
謝罪系の手紙では他に…夏休み中に『宜 戦 の 詔 勅 』を な く し ま し た!って子とかいるんだけど…!
え、ちょ…もっと大丈夫だったのか…?!!新学期早々怒られなかったかな…心配!!
でもたのしく遊んでまーす!みたいな事も書いてるから無問題か?
あと内容はわからないけど、「不心得なる行為」に「ご寛大なる御処置」ありがとうございましたああ!ってほんとに凄い謝ってるこもいる。
なにしたんや…。
あと、ちょうエリートのたまごが「冬休み中に学校へ残留だし(詳細不明)、尻上がり(逆上がりのことか)も出来ないので心配です」って担任に送ってるううう!
自分メモ:休日の 鉄棒に来て 少年が 尻上がりに世界に入って行けり 佐藤通雅『水の涯』
まさにこの世界だなあ…佐々木くん。さっきみつけた http://j.mp/bDay0G
ヤバイ、どのはがき見てもにこにこするよう!買って良かった!!
■あと、これだけS18~19年正月の投函済みハガキが集まってる資料ということも色々興味深い。
担当員の書く「閲」の(スタンプでなく肉筆)の酷さw
一生懸命描いたであろう絵の上に書かないであげて下さいよ…。
同じ筆跡でわざわざ「〇〇様方」の苗字書き忘れ・差出人名の下に「拝」って書き足してる…!いらん親切!
まあまた今度ほかのもご紹介。
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「お初ちゃん」という時代の暴力性
■上田トシコ『お初ちゃん』読んでててムカついてくる。
話も面白いし凄くおしゃれ。お初ちゃん達キャラも可愛い。
悪くない。
周囲にも社会的にも金銭的にも恵まれた「当時の憧れ」な天真爛漫な女子高生。
彼氏はイケメン東大生でとっても優しくて、このカップルとってもかわいい。
他のキャラも面白いし、魅力的なのでキャラ云々ではない。
ただただ根底にある1960年代の強引さっていうか、とにかく風潮が合わんようだ。
作品にはなんの落ち度もない。すごくおもしろい。
ただただ設定された時代風潮に不快感を持つ。なんなんだろうなー。
もともと昭和30年前半以降の(一部除いて)日本現代史に急激に食指動かなくなるからな、そこらが原因だろうけど。なんかあの無責任にみえる風潮がムカつく(って失礼なことを思う)。
お初ちゃんはさー屈託なく恵まれて生きてるの。
イケメン東大生(卒業後雑誌記者になる)の彼氏持ちの女子高生で、やりたい事やって生きてる憧れ。自由でキラキラしてて、ちゃっかりしててかわいい。
でも同じ屈託なく生きてる、使用人の子って不当に扱われるのには断固拒否するけど、弁えもって自分の責務を果たして生きてる『フイチンさん』の、フイチンさんの方が好きだな。
たぶんそれは、個人のパーソナリティとしての設定じゃなく、時代性だと思う。
そこが1950年代に描かれた(設定は戦前満洲だけど)フイチンさんと、1960年の娯楽雑誌「平凡」連載のお初ちゃんとの違い。
あの時代は勢いは解るんだけど無責任感を感じて苦手…。
そういう意味で上田先生はすごいなあって思うんだけど、まあそんな感じ。
でもほんとうにキャラの線もスタイルもファッションもおしゃれで、話もウィットに飛んだ風刺も織り込んでて、上田トシコ『お初ちゃん』オススメ!
当時女子校で流行ってた【エス】(マンガ内ではマリア様がみてるのスール的な感じのもの)も、ちゃっかりしてる後輩を描いててしっかり裏表描いてる。
■『フイチンさん』は、戦後に戦後の異民族社会を描いているのに、普遍的な心のありようを描いてるので非常に読みやすい上、風俗がリアルで素晴らしい。
その設定された物語背景に、戦後日本の民主主義を上手く反映して描いてるんだけど「満洲」の雰囲気は壊してない。お話として矛盾していない手腕も興味深いよよよ。
話も面白いし凄くおしゃれ。お初ちゃん達キャラも可愛い。
悪くない。
周囲にも社会的にも金銭的にも恵まれた「当時の憧れ」な天真爛漫な女子高生。
彼氏はイケメン東大生でとっても優しくて、このカップルとってもかわいい。
他のキャラも面白いし、魅力的なのでキャラ云々ではない。
ただただ根底にある1960年代の強引さっていうか、とにかく風潮が合わんようだ。
作品にはなんの落ち度もない。すごくおもしろい。
ただただ設定された時代風潮に不快感を持つ。なんなんだろうなー。
もともと昭和30年前半以降の(一部除いて)日本現代史に急激に食指動かなくなるからな、そこらが原因だろうけど。なんかあの無責任にみえる風潮がムカつく(って失礼なことを思う)。
お初ちゃんはさー屈託なく恵まれて生きてるの。
イケメン東大生(卒業後雑誌記者になる)の彼氏持ちの女子高生で、やりたい事やって生きてる憧れ。自由でキラキラしてて、ちゃっかりしててかわいい。
でも同じ屈託なく生きてる、使用人の子って不当に扱われるのには断固拒否するけど、弁えもって自分の責務を果たして生きてる『フイチンさん』の、フイチンさんの方が好きだな。
たぶんそれは、個人のパーソナリティとしての設定じゃなく、時代性だと思う。
そこが1950年代に描かれた(設定は戦前満洲だけど)フイチンさんと、1960年の娯楽雑誌「平凡」連載のお初ちゃんとの違い。
あの時代は勢いは解るんだけど無責任感を感じて苦手…。
そういう意味で上田先生はすごいなあって思うんだけど、まあそんな感じ。
でもほんとうにキャラの線もスタイルもファッションもおしゃれで、話もウィットに飛んだ風刺も織り込んでて、上田トシコ『お初ちゃん』オススメ!
当時女子校で流行ってた【エス】(マンガ内ではマリア様がみてるのスール的な感じのもの)も、ちゃっかりしてる後輩を描いててしっかり裏表描いてる。
■『フイチンさん』は、戦後に戦後の異民族社会を描いているのに、普遍的な心のありようを描いてるので非常に読みやすい上、風俗がリアルで素晴らしい。
その設定された物語背景に、戦後日本の民主主義を上手く反映して描いてるんだけど「満洲」の雰囲気は壊してない。お話として矛盾していない手腕も興味深いよよよ。
のらくろのパラレル系譜。
■のらくろには大きく分けて、2つのパラレルがある。
1-1は、戦前の少年倶楽部連載および単行本の系譜。
1-2としての、戦後に単行本で出て、最終的におぎんちゃんと結婚して喫茶店やるバージョン。
戦前の話と直接つながっているわけでもなく、田河水泡先生自身の描き方もかなり違ってるので、個人的にはこれもパラレルとしたい。
2つめは、戦後にリバイバル版として新しく書きなおされた「普通社」「ろまん書房」。
読者層が大人になっている(むしろ、かつて少年だった大人へ、向けというか)。
ここのサイトが詳しいので参照に。
2-2として、雑誌『丸』に連載されて、のち単行本『のらくろ自叙伝』になった話。2-1とだいたい同じような話の内容。
あとは各種パラレルも少数(特に戦後すぐ、のらくろがいろんな職業やったりする話も多い。
「なぜか」一時期近代デジタルライブラリーで閲覧可能になってたw『のらくろ珍品草』とか)。
中部日本新聞に連載された『のらくろ』『2代目のらくろ』(平日連載の、だいたい8コマ程度。カラーページ多し)は、のらくろとその息子の話。奥さんも出てくるが外見は似ているものの、おぎんちゃんではなさそう。「母親」という役割以上に付与されたものは感じない。
他にセリフが全てカタカナ表記の『チャメケン』など、他の漫画への準レギュラー出演とか。
中日新聞版『のらくろ』『2代目のらくろ』および『チャメケン』は単行本化していない模様。
各種、掲載新聞および雑誌で確認するしかない。
(チャメケンは読むのにちょっと手間がかかった。入手がなかなか…)
この各種戦後版に関してはまた今度詳しく。
■2に共通する点としては、1の戦前とは全く違うこと。
猛犬連隊の他の連隊にいた別犬・野良犬黒吉の話、って感じ。パラレル以前に。
漫画版は第一連隊らしいので、同じ東京(なんて云ってもテラ江戸弁w)なら第三連隊の話って感じ。それくらい違うけど、戦前版のネタもときおり上手く入ってくる。
なかなかおもしろい。今で言う、原作と映像化の時の違いのような。
■戦後ものに共通するんだけど、ストーリーとして大人向きであるが故に、非常に面白い。
また興味深いのが「猛犬連隊は人材不足であり、将官が早い」こと。
戦争末期を思い出すわ。でも、反戦心理描写や上等兵時代の辺なんかは、田河先生従軍時代である大正末の軍人の「流行ってない」微妙な社会的地位もうまくアレンジして犬社会の中に書き込んである。
そこらは、テーマの違いと云う感じか。
戦前のテーマは佐藤紅緑作成の「陽気に元気にいきいきと」という中にある「どんな逆境に育っても、決して自分自身を見限ったりするものではない(全集前書から)」。
それって、当時の未来ある少年らが望んだ(=だから売れた)ものだったろうわけで。
戦後のシニカル色濃い(最も大岡昇平などの平穏な大正期に青年期を送ってる世代特有の、軍隊に対する少し斜めに見た感は、戦前でも既に見えるけどw)戦争批判を込めた描き方は、かつての少年が見た現実を投影してるのがテーマなので、感じてしまう戦前版のイメージからとの違和感はテーマ違いだからなのだよね。
でもさすがストーリー面白い…!
(考え方の違いといえば。
つねづね『のらくろ漫画全集』の手塚治虫の文章に疑問を持ってたんだけど、それは田河先生との世代なんだろうなーなんて思う。
手塚の象狩りの話の読み方は戦後的つか、無理に階級を作ってる感じ。とちょっとだけ。
いや、疑問の本題は違うことだけど、捉え方の問題なのかな。って)
■まあ、長く適当なこと云ってたけど。わたし的には。
戦前版:凛々し可愛いかんじの小柄な第一連隊所属
戦後版:江戸っ子いなせな若造の第三連隊所属
ってイメージ。戦後版は犬耳しっぽがない方がいいかも。デカも戦後版はおおらか田舎青年だな。戦前版は普通のいいとこの子にする。
タグ:のらくろ
1-1は、戦前の少年倶楽部連載および単行本の系譜。
1-2としての、戦後に単行本で出て、最終的におぎんちゃんと結婚して喫茶店やるバージョン。
戦前の話と直接つながっているわけでもなく、田河水泡先生自身の描き方もかなり違ってるので、個人的にはこれもパラレルとしたい。
2つめは、戦後にリバイバル版として新しく書きなおされた「普通社」「ろまん書房」。
読者層が大人になっている(むしろ、かつて少年だった大人へ、向けというか)。
ここのサイトが詳しいので参照に。
2-2として、雑誌『丸』に連載されて、のち単行本『のらくろ自叙伝』になった話。2-1とだいたい同じような話の内容。
あとは各種パラレルも少数(特に戦後すぐ、のらくろがいろんな職業やったりする話も多い。
「なぜか」一時期近代デジタルライブラリーで閲覧可能になってたw『のらくろ珍品草』とか)。
中部日本新聞に連載された『のらくろ』『2代目のらくろ』(平日連載の、だいたい8コマ程度。カラーページ多し)は、のらくろとその息子の話。奥さんも出てくるが外見は似ているものの、おぎんちゃんではなさそう。「母親」という役割以上に付与されたものは感じない。
他にセリフが全てカタカナ表記の『チャメケン』など、他の漫画への準レギュラー出演とか。
中日新聞版『のらくろ』『2代目のらくろ』および『チャメケン』は単行本化していない模様。
各種、掲載新聞および雑誌で確認するしかない。
(チャメケンは読むのにちょっと手間がかかった。入手がなかなか…)
この各種戦後版に関してはまた今度詳しく。
■2に共通する点としては、1の戦前とは全く違うこと。
猛犬連隊の他の連隊にいた別犬・野良犬黒吉の話、って感じ。パラレル以前に。
漫画版は第一連隊らしいので、同じ東京(なんて云ってもテラ江戸弁w)なら第三連隊の話って感じ。それくらい違うけど、戦前版のネタもときおり上手く入ってくる。
なかなかおもしろい。今で言う、原作と映像化の時の違いのような。
■戦後ものに共通するんだけど、ストーリーとして大人向きであるが故に、非常に面白い。
また興味深いのが「猛犬連隊は人材不足であり、将官が早い」こと。
戦争末期を思い出すわ。でも、反戦心理描写や上等兵時代の辺なんかは、田河先生従軍時代である大正末の軍人の「流行ってない」微妙な社会的地位もうまくアレンジして犬社会の中に書き込んである。
そこらは、テーマの違いと云う感じか。
戦前のテーマは佐藤紅緑作成の「陽気に元気にいきいきと」という中にある「どんな逆境に育っても、決して自分自身を見限ったりするものではない(全集前書から)」。
それって、当時の未来ある少年らが望んだ(=だから売れた)ものだったろうわけで。
戦後のシニカル色濃い(最も大岡昇平などの平穏な大正期に青年期を送ってる世代特有の、軍隊に対する少し斜めに見た感は、戦前でも既に見えるけどw)戦争批判を込めた描き方は、かつての少年が見た現実を投影してるのがテーマなので、感じてしまう戦前版のイメージからとの違和感はテーマ違いだからなのだよね。
でもさすがストーリー面白い…!
(考え方の違いといえば。
つねづね『のらくろ漫画全集』の手塚治虫の文章に疑問を持ってたんだけど、それは田河先生との世代なんだろうなーなんて思う。
手塚の象狩りの話の読み方は戦後的つか、無理に階級を作ってる感じ。とちょっとだけ。
いや、疑問の本題は違うことだけど、捉え方の問題なのかな。って)
■まあ、長く適当なこと云ってたけど。わたし的には。
戦前版:凛々し可愛いかんじの小柄な第一連隊所属
戦後版:江戸っ子いなせな若造の第三連隊所属
ってイメージ。戦後版は犬耳しっぽがない方がいいかも。デカも戦後版はおおらか田舎青年だな。戦前版は普通のいいとこの子にする。
タグ:のらくろ
のらくろという兵隊の休日。
■のらくろの孤児設定で『のらくろ自叙伝』にあった一文が本当に忘れられない。
「あの涙のように兵舎に溶け込んで、自分と軍隊の化合物になってしまえば、孤独感を引きずってさまよい歩かなくてもすむだろう、と思った」
日曜に、帰る家のある戦友達を見送って。冬の空を見上げたら涙が窓枠に零れたという一節。
■それでのらくろは詩を作るんだけど、それが田河先生のダダイスト的なものがすごく出てる注目すべき詩。
「これはおれの涙だ でもおれは否定する
俺は泣いた覚えはない 涙よ、お前こそ孤独だ」
涙が窓枠に染み込んで孤独でなくなった様に、自分も軍隊に染み込んだら孤独じゃない…!
そして、己自身(の感情の発露)である涙を否定することで新しい自身を腕づくで作り出してる。
泣いてなんかない!ってのらくろ意地っ張りだから…!!いいこだなああホントに!!
いつも元気で朗らかなのに、内面では孤独感を自分で克服しようとしてるとこが、ホントに可愛くていじらしくて立派すぎるよ…!!!つよいこのらくろ!!
■戦前版でも、のらくろがこじであるという話をみんな知ってて、普通のことのように云わせてるから、余計に響くというか。
デカも別に「ああ、班長どのは家族がいないから可哀想だ」とか云ったり、家族のことを下手に隠したりしないで、同情を一切描かないのもいいなあ、と心に残る。
「あの涙のように兵舎に溶け込んで、自分と軍隊の化合物になってしまえば、孤独感を引きずってさまよい歩かなくてもすむだろう、と思った」
日曜に、帰る家のある戦友達を見送って。冬の空を見上げたら涙が窓枠に零れたという一節。
■それでのらくろは詩を作るんだけど、それが田河先生のダダイスト的なものがすごく出てる注目すべき詩。
「これはおれの涙だ でもおれは否定する
俺は泣いた覚えはない 涙よ、お前こそ孤独だ」
涙が窓枠に染み込んで孤独でなくなった様に、自分も軍隊に染み込んだら孤独じゃない…!
そして、己自身(の感情の発露)である涙を否定することで新しい自身を腕づくで作り出してる。
泣いてなんかない!ってのらくろ意地っ張りだから…!!いいこだなああホントに!!
いつも元気で朗らかなのに、内面では孤独感を自分で克服しようとしてるとこが、ホントに可愛くていじらしくて立派すぎるよ…!!!つよいこのらくろ!!
■戦前版でも、のらくろがこじであるという話をみんな知ってて、普通のことのように云わせてるから、余計に響くというか。
デカも別に「ああ、班長どのは家族がいないから可哀想だ」とか云ったり、家族のことを下手に隠したりしないで、同情を一切描かないのもいいなあ、と心に残る。
三段論法で井上武彦『同行二人』
■NHKで『北京のイケメン警官』のドキュメントをやっていたことがあった。
確かに爽やか男前警官。でもソレ以上に、こ番組紹介の文から見るに「自分から、自分のやれることを自分の仕事において精一杯やる」姿勢がイケメンちゅーか男前なんだろなー。って思ったりり。
伝説になってプロパガンダに使われちゃってた雷峰の話だって、根本的には「自分のやれることを最大に、自分を弁えつつ人のためにする」ってことが大きいと思うのだけれど。
現実はその逆とか尾ひれついてるだろとか色々あるが、それでも責任感の大切さは変わらんし、日本の軍神だって今だからもっと評価されていい人多いよね。
軍神といえば佐久間艇長。
責任感に危機迫るものを感じる。
艇長の話を絡め、潜水艦の密室を舞台に、真珠湾の旧軍人のひとりがモデルの植物的な笑みを見せる青年少尉を観察する軍医視点で書いた、井上雄彦「同行二人」はなぜ復刊しないのか。(漸く本題)
三島由紀夫が「俺には書けない」って絶賛悔しがった名作だぜ!
戦闘する集団でも外部と隔絶された密室潜水艦で直面せざるを得ない「死」の概念を、野性の咆哮で対峙するか、観念として受け止めるかっていう対立心理劇も面白い。
少尉と艇付の二人の男の関係性も、対局と融合と二重性で二人が死を見つめる様を、美しい文体でうまく表現してて文学として秀逸すぎ。
少年じみててあわあわと植物的な坂田少尉のイメージ…草加拓海@かわぐちかいじ『ジパング』なんだよお。外見。四郎様もいい。とにかくアレ系。
(坂田少尉のモデル(あくまで人物設定のみ)は酒巻和男少尉。そこらもちょっと考えると興味深い感じ)
稲田二等兵曹は山中しかない。
あと、更に二人の暮らしをおはようからお休みまで見つめる軍医(主人公)は、米倉のイメージで。
原題は『死の武器』、直木賞59回候補作を改題したのが『同行二人―特殊潜航艇異聞』。
大佛次郎が「叙述が細密すぎて」って云うけど、ソレがいいんじゃないか…!
大佛先生、わかってない!!!!!
タグ:戦後文学
確かに爽やか男前警官。でもソレ以上に、こ番組紹介の文から見るに「自分から、自分のやれることを自分の仕事において精一杯やる」姿勢がイケメンちゅーか男前なんだろなー。って思ったりり。
伝説になってプロパガンダに使われちゃってた雷峰の話だって、根本的には「自分のやれることを最大に、自分を弁えつつ人のためにする」ってことが大きいと思うのだけれど。
現実はその逆とか尾ひれついてるだろとか色々あるが、それでも責任感の大切さは変わらんし、日本の軍神だって今だからもっと評価されていい人多いよね。
軍神といえば佐久間艇長。
責任感に危機迫るものを感じる。
艇長の話を絡め、潜水艦の密室を舞台に、真珠湾の旧軍人のひとりがモデルの植物的な笑みを見せる青年少尉を観察する軍医視点で書いた、井上雄彦「同行二人」はなぜ復刊しないのか。(漸く本題)
三島由紀夫が「俺には書けない」って絶賛悔しがった名作だぜ!
戦闘する集団でも外部と隔絶された密室潜水艦で直面せざるを得ない「死」の概念を、野性の咆哮で対峙するか、観念として受け止めるかっていう対立心理劇も面白い。
少尉と艇付の二人の男の関係性も、対局と融合と二重性で二人が死を見つめる様を、美しい文体でうまく表現してて文学として秀逸すぎ。
少年じみててあわあわと植物的な坂田少尉のイメージ…草加拓海@かわぐちかいじ『ジパング』なんだよお。外見。四郎様もいい。とにかくアレ系。
(坂田少尉のモデル(あくまで人物設定のみ)は酒巻和男少尉。そこらもちょっと考えると興味深い感じ)
稲田二等兵曹は山中しかない。
あと、更に二人の暮らしをおはようからお休みまで見つめる軍医(主人公)は、米倉のイメージで。
原題は『死の武器』、直木賞59回候補作を改題したのが『同行二人―特殊潜航艇異聞』。
大佛次郎が「叙述が細密すぎて」って云うけど、ソレがいいんじゃないか…!
大佛先生、わかってない!!!!!
タグ:戦後文学
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執筆者
HN:
永月弥生
性別:
非公開